入れ歯(義歯)を作る際の費用や総入れ歯・部分入れ歯のメリット・デメリット、保険と自費の違いを解説!

解説

  • 種類(総入れ歯・部分入れ歯)
  • メリット・デメリット
  • 保険と自費の違い
  • 費用

歯を失うことを欠損といいます。歯が欠損したときの治療法はいくつかあります。
そのひとつが入れ歯です。入れ歯は、保険診療で受けられるタイプやそうでないタイプなど、さまざまなタイプがあり、それぞれに特徴や費用が異なります。
今回は、入れ歯の特徴に加え、入れ歯を作ってもらうときに必要な費用などについてご説明します。

歯が欠損したときの治療法

ブリッジが
向いている方

  • 短期間で治療したい
  • 失った歯の前後に被せ物が入っている
  • 出来るだけ費用を抑えたい

インプラントが
向いている方

  • 見た目への影響を最小限にしたい
  • 健康な歯を傷つけたくない
  • 入れ歯に抵抗感がある

今回は入れ歯について解説します!

入れ歯の種類と費用目安

※右にスクロールしてご覧ください。

部分入れ歯保険診療人工歯と義歯床はプラスチック(レジン)、クラスプは金属3,600円~7,500円前後
(3割負担の場合)
自費診療金属床義歯
ノンクラスプデンチャー
コーヌスクローネ義歯、など
約8万円~80万円
総入れ歯保険診療人工歯・義歯床ともに、プラスチック(レジン)10,000~15,000円程度
(3割負担の場合)
自費診療金属床の総義歯
シリコン製の入れ歯
インプラントオーバーデンチャー(インプラント+入れ歯)、など
約20万円~150万円

保険診療

全国どこの歯医者で治療しても同様の内容

  • 同じ治療費(クラスプの種類、本数によって金額は多少前後)
  • 使える素材に制限がある
  • 治療内容が決められた範囲内に限定される

自費診療

保険診療のように一律の決まりや制限はない

歯医者によって治療範囲、入れ歯の種類、金額が大幅に異なる。

そもそも『入れ歯』って何??

入れ歯とは、

入れ歯は、欠損した歯の代わりとなる人工歯と人工歯を支える床(しょう)とよばれる部分を主構造とした人工歯です。床があるところが入れ歯の特徴で、入れ歯以外の治療法には床がありません。

入れ歯について

入れ歯は、部分入れ歯総入れ歯の2種類に分けられます。

部分入れ歯

部分入れ歯

部分入れ歯は、歯がいくつか残っている方向けの入れ歯です。
部分床義歯ともよばれ、人工歯が1本だけのコンパクトな入れ歯から、歯を1本残すだけという大きな入れ歯までさまざまなタイプがあります。
歯に引っかけるクラスプという金具がついているのが特徴で、床の部分とクラスプで入れ歯を支える構造になっています。
また、部分入れ歯の形によっては、バーという金属製のフレームをつけることもあります。

総入れ歯

総入れ歯

総入れ歯は、全く歯がなくなってしまった方向けの入れ歯です。
クラスプがないので全部床義歯ともよばれ、部分入れ歯と異なり歯が全く残されていないので、総入れ歯の構造は比較的単純です。
総入れ歯は、粘膜への吸着力、すなわち吸盤のようにお口の粘膜に張り付くことで外れないようになっています。

総入れ歯・部分入れ歯のメリット・デメリット

入れ歯にはいろいろな種類がありますが、入れ歯全般に共通する特徴についてのメリット・デメリットを説明します。

総入れ歯・部分入れ歯のメリット

まずメリットにから説明します。

メリット 01

歯を削らない

歯が欠損したときの治療法は、入れ歯以外にブリッジがあります。ブリッジは被せ物で治す方法なので、歯を大きく削らなくてなりません。
一方、入れ歯は、歯を削らなくても入れることができます。

※入れ歯の構造でレストという沈み込まないようにする部位があり、それを作るためのレスト窩というくぼみを作る際のみわずかに歯を削ることがあります。
一度歯を削ると元に戻らない上、削られたところが弱くなってしまうので、歯を削らなくていいのは、入れ歯の大きなメリットです。

メリット 02

お手入れが簡単

入れ歯は、取り外しできますので、外せばお手入れは簡単です。
ブリッジは、外せないので人工歯部分のお手入れがとても難しく、簡単にお手入れできるのも入れ歯のメリットのひとつです。

メリット 03

大きさに制限がない

歯が全くなくなったときでも総入れ歯という選択肢があるように、入れ歯には大きさの制限がありません。
ブリッジは、欠損した歯の本数が原則的に連続して2本までというように、大きさに制限がありますので、大きさに制限がないのも入れ歯の利点です。

総入れ歯・部分入れ歯のデメリット

続いて、入れ歯全般に共通するデメリットを説明します。

デメリット 01

違和感が大きい

まず挙げられるのが、違和感の大きさです。
入れ歯は、人工歯部分に加えて、支えとなる床、部分入れ歯ではクラスプという構造が組み込まれています。その分、どうしてもサイズが大きくなってしまうため、使用時の違和感が大きくならざるを得ません。

また、ブリッジとの一番の違いがお口の中でもわずかに動くことです。外せるということは動くということです。口の中に動くものが入っていることに対しての違和感が入れ歯の一番のデメリットかもしれません。

デメリット 02

金具が歯の寿命に影響する

部分入れ歯は、クラスプで安定を図るように作られているのですが、入れ歯をつけたり外したりするたびに、歯に負荷をかけてしまいます。
もちろん、つけてしまった後も食事で噛むたびに歯に負担がかかります。
これが、長い目で見ると歯に悪影響を及ぼし、歯の寿命を短くします。

デメリット 03

お手入れが手間

入れ歯は、食べると必ず床の内側に食べ物が入り込みます。
どれだけフィットが良い入れ歯であっても食べ物が入るのは避けられません。
このため、食事のたびに入れ歯を外して洗う必要があります。
外せば簡単にお手入れできるとはいえ、食事のたびに外して洗わなくてはならないのは、やはり手間であることに変わりなく、これも入れ歯デメリットのひとつです。

デメリット 04

えずきやすいと使えない

嘔吐反射の強い方は、歯ブラシを入れるのも難しいことがあり、嘔吐反射の強い方にとっては、入れ歯を作るための歯型取りさえ難しく、入れ歯を作ることができません。
頑張って作ったとしても、なかなか使っていただきにくく、えずきやすい方には入れ歯という選択肢は難しいです。

デメリット 05

心理的な抵抗感

入れ歯、イコール、高齢者というイメージがあるように、入れ歯はお年寄りのものと連想されがちです。このため、若い方などに多いのですが、入れ歯に心理的な抵抗感を持ってしまう方も多いです。

デメリット 06

ニオイ

新しいうちはいいのですが、使っていくうちに入れ歯には特有のニオイを帯びるようになります。どれだけていねいにお手入れをしていても、どうしてもニオイがついてしまいます。

保険診療自費診療の違い

入れ歯にも、保険診療で作られるタイプと、そうでないタイプがあります。

保険診療の入れ歯

保険診療の入れ歯は、使える材料や材質、構造が決められています

レジン床義歯

レジン床義歯

保険診療で主流の入れ歯は、床がレジンというプラスチック材料で作られたレジン床義歯です。
人工歯は、レジンで作られたレジン歯のほか、硬質レジン歯という硬めのレジンで作られた歯、床用陶歯などから選びます。
レジン床義歯には、治療費の安さに加え、壊れたときの修理が比較的簡単という利点もあります。クラスプが折れた場合は、すぐというわけにはいきませんが、新しいクラスプを作り直して、入れ歯にもう一度組み込むという方法で修理できます

治療期間:約1ヵ月

費用目安:1万~1万5千円(保険適用)

熱可塑性義歯

熱可塑性義歯

熱可塑性義歯は、加熱したときにだけ形が変わる特殊なプラスチックを使って作られた入れ歯です。
同じく保険診療で作られるレジン床義歯と比べると、強度が強く壊れにくい、変形しにくいという利点がありますが、噛み合わせが窮屈な場合は作りにくいという難点もあります。

治療期間:約1ヵ月

費用目安:3千〜2万円(保険適用)

自費診療の入れ歯

自費診療の入れ歯は、保険診療と違い、使う材料や材質、構造に制限がありません。制限がない分、保険診療で作る入れ歯より格段に優れた性質を持つ入れ歯を作れます。それぞれの特徴も併せて紹介します。

金属床義歯

金属床義歯

金属床義歯は、床の部分の大部分が金属で作られた入れ歯です。総入れ歯にも部分入れ歯にも対応しています。
床の部分をプラスチックではなく金属にすることで、床の厚みがとても薄くなる上、粘膜表面にある自然な凸凹を再現できるので、舌触りが良いです。
金属は熱を伝えやすいので、食べ物や飲み物の温度を感じやすいのも金属床の利点です。
また、プラスチックと違い、粘膜へのフィットが良いので、総入れ歯でも外れにくく使い勝手も良好です。
反面、リベースが困難という難点があります。

金属床義歯の特徴(保険の義歯と比べて)

  • 色々な設計が可能
  • 食物の味がわかりやすい
  • 食物の温度がよくわかる
  • 土台は長く使用できる
  • 舌感が良く、違和感が極めて少ない

床の厚みがとても薄く、舌触りが良い

薄い金属床、厚いレジン床

食べ物や飲み物の温度を感じやすい

レジン床と金属床

治療期間:1ヶ月〜3ヶ月

費用目安:

コバルトクロム床 20万円~
チタン床(とにかく軽い!)35万円~
金属床(金合金)50万円~

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャーは、部分入れ歯のひとつで、シリコンなどで作られています。
クラスプがなく、床の部分が前に伸びていて、クラスプの代わりに歯肉に引っ掛かるようになっています。
金属製のクラスプがないので目立ちにくい上、金属アレルギーの方にも安心して使っていただけるのが利点です。
一方、リベースや壊れたときの修理が難しいのが難点です。

自然な仕上がり

ノンクラスプデンチャー

柔軟性がある

ノンクラスプデンチャー

治療期間:2~3か月

費用目安:10〜20万円弱

コーヌス義歯

コーヌス義歯

コーヌス義歯も部分入れ歯の一種です。
クラスプの代わりに、入れ歯にクラウンという被せ物がついています。
このクラウンは二重構造になっています。
一方が入れ歯についており、もう一方が支えとなる歯についています。
コーヌス義歯は、入れ歯についているクラウンを支えの歯に嵌め込むことで、外れないように作られています。
クラスプがないので、目立ちにくく、コンパクトに作られているので使用感が良い、他の入れ歯と比べるとしっかり噛むことができるなどの利点があります。
一方、製作が難しいので治療費が高い、修理が難しいのが難点です。

治療期間:6カ月~

費用目安:50万〜150万円

インプラント義歯

インプラント義歯

インプラントは、インプラントとよばれる人工の歯根を顎の骨に埋め込み、そこに上部構造という被せ物を装着する欠損した歯の治療法の一つです。
欠損したところにすべてインプラントを入れるのが理想かもしれませんが、そうなると歯が全くなくなっている方は本数が多くなるので、手術も費用もたいへんです。
そこで、インプラントを数本にとどめて、その上に入れ歯を入れて、噛み合わせを回復する治療法が考案されました。
それがインプラント義歯です。
インプラントを歯の本数、28本分も入れることがないので、費用も抑えられます。
その上、インプラント義歯は、インプラントが固定源になるので、入れ歯がかなりしっかりと安定し、食べ物をしっかりと噛むことができるという利点もあります。

治療期間:3カ月~1年

費用目安:150〜250万円

保険診療と自費診療の入れ歯の治療費

保険診療の入れ歯と自費診療の入れ歯では、治療費に大きな差があります。

保険診療の入れ歯の治療費

保険診療の入れ歯は、全国どこの歯科医院で作っても、費用は同じですし、原則的に窓口でお支払いになるのは治療費の3割だけなので、とても安価です。

部分入れ歯

部分入れ歯は、大きさによって差があります。窓口でお支払いになる金額は、ベースの部分が2,000円弱~5,000円弱です。

人工歯の費用も本数や種類によって変わり、50円弱~500円弱です。クラスプなどの金具の費用も、やはり形や数、材質によって差があります。比較的多い、コバルトクロムという合金で作ると、1つ500円弱~900円弱です。バーという金属製フレームは、1本1,500円弱です。

なお、コバルトクロム合金の他、金銀パラジウム合金で作られることもありますが、金銀パラジウム合金はコバルトクロム合金より2~4倍と高価です。これらを合算した額が、部分入れ歯の治療費になります。


総入れ歯

総入れ歯は、構造が単純なので、費用にもあまり違いがありません。
歯型取りや仮合わせの費用を省くと、レジン床義歯で硬質レジンの人工歯の場合、窓口でお支払いになる総入れ歯の代金は、3割負担で10,000~15,000円程度です。

自費診療の入れ歯の治療費

自費診療の入れ歯は、それぞれの歯科医院が独自に料金を決めている上、保険診療のように治療費の給付がないので、全額を窓口でお支払いいただく必要があります。

金属床義歯

金属床義歯は、どのような金属材料を使うのかによって費用に大きな開きがあります。
多いのは、コバルトクロム合金、チタン、金合金です。
最も低価格なのは、コバルトクロム合金で作られた金属床義歯です。
最も低価格といっても、20万円〜で、チタンで作られたタイプでは、35万円〜です。
最も高額なのは、金合金で作られた金属床義歯で、50万円以上します。

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャーも大きさによって費用に差があります。
10〜20万円弱くらいが多いようです。

コーヌス義歯

コーヌス義歯は、製作するのがとても難しいので、治療費もその分高額です。
コーヌス義歯も大きさや形、材質、被せ物の数などによって変わります。
ベースとなるところの費用が50〜70万円くらいです。
支えとなるクラウンは、金合金で作るとひとつ15万円前後、金銀パラジウム合金で作ると10万円前後と、素材によって費用に差があります。
コーヌス義歯の費用は、これらの費用を合算した金額になります。

インプラント義歯

インプラント義歯は、インプラントを数本埋め込む必要があるので、治療費が高額です。
全ての歯をインプラントで治療するよりは安いのですが、それでも150〜250万円くらいになります。

入れ歯完成までの流れ

保険適用の総入れ歯を作る過程についての流れ

※保険診療のルールについて

入れ歯はほかの医院でも、当院でも保険で1度作成してから半年間はあたらしく製作することが認められておりません。もし期間内に新製を希望される方は自由診療となります。

歯型取り(印象採得)

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歯型取り(印象採得)

歯茎の型を取る器具(トレー)に印象剤を盛り、歯茎の大まかな型取りを行います。
まずは既製品のトレーを使用します。

より精密な歯型取り(精密印象採得)

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より精密な歯型取り(精密印象採得)

※主に歯の残ってる本数が少ない時、総入れ歯の時に行います。

前回、既製トレーで採取した歯型をもとに個人トレー(患者様それぞれに合った型どり用トレー)を作製し、それを用いてより精密な型取りを行います。

模型製作・修正

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模型製作・修正

型取りしたものに石膏を流し込み正確な型を取ります。
細部まで細かく修正をします。

かみ合わせを取得(咬合採得)

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かみ合わせを取得(咬合採得)

上下の顎の位置を決めるために、噛み合わせを確認します。
咬合床を取り付け、口全体の状態を調べながらロウを加工し、咬む位置を調整します。噛み合わせの確認は非常に重要な工程となりますので、1つ1つ丁寧に確認していきます。

歯を並べた最終段階のチェック(排列試適)

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歯を並べた最終段階のチェック(排列試適)

パラフィンワックスの上に人工歯を並べ、噛み合わせや安定感、歯の見え方など様々なことを確認します。
まだワックスでできているため、この段階では修正が可能です。
問題がなければ技工所に送り完成させていきます。

入れ歯を硬化させます(重合)

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入れ歯を硬化させます(重合)

入れ歯の床の樹脂に熱を加えて硬化させる過程です。
パラフィンワックスで出来ている部分をレジンに置き換えます。
ワックスをレジンで置き換える際にレジンが収縮をするので、完成時に少し修正が必要になることもあります。

完成

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完成

完成した入れ歯を装着し、再度、違和感の有無や噛み合わせなどを確認して、お口に合うように細かく調整していきます。先ほど記載した重合収縮によるずれなども補正します。

調整

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調整

入れ歯は完成後も手入れを継続的に行うことがとても重要です。 毎日のお手入れと、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。患者様によっても異なりますが、3ヶ月〜半年に1回程度の定期メンテナンスをおすすめしております。

つじファミリー歯科の入れ歯に対する考え方

今回は、入れ歯の特徴や費用などについてご説明しました。
入れ歯は、部分入れ歯、総入れ歯に分けられ、それぞれに保険診療の入れ歯、自費診療の入れ歯があります。それぞれにメリットやデメリットがあり、入れ歯を考える際には、それぞれの特徴をよく理解しておく必要があります。
普段の食生活もそうですが、人それぞれ特性も違うため、当院では、それを見極めての治療や指導を心がけています。
入れ歯でお悩みの方、入れ歯を詳しく知りたい方は、当院にぜひお越しください。

清潔な口内環境で、皆さんが健康的な毎日を送れるように
つじファミリー歯科は応援しています。